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だいぼさつとうげ

大菩薩峠10

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠10(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 285,635 字 · 558 頁

青空文庫

「それだけじゃいけません」

「いけませんといったって、それより以上のことは、拙者の役目にないことで、またしようとしてもできないことです」

「ねえ、あなた、浅間へ帰ると言いましたのは嘘なんですよ、わたしは、あんなところへ帰る気はありません」

「帰らなければ、どこへ行きます」

「わたしは、江戸へ帰りたいのです」

「それは事情が許しますまい、江戸へ帰るならば、帰るようにして帰らない以上は、迷惑が湧いて、災難を求めるようなものです」

「ただは帰れませんから、逃げて帰るよりほかはありません」

「一里二里も覚束ない足で、どうして江戸へ帰ります」

「ですから、わたしは、あなた様におすがり申しているじゃありませんか、どうぞ、このまま、わたしを連れて逃げて下さい」

「何をおっしゃる――そなたを連れて、拙者に江戸へ逃げろといわれるのですか」

「お江戸でいけなければ、どこでもようございます――京でも、大阪でも、いっそ、誰も知らない山の中でも、海の涯でも、どこでもようございますから、このまま、わたしを連れて逃げて下さいまし」

「なるほど」

兵馬は、この間も、腕組みをして、悠々閑々と歩いていることを少しも止めないでいましたが、この時から、以前、二三間ずつは必ず離れていた女が、兵馬の袖にすがって離れません。