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だいぼさつとうげ

大菩薩峠10

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠10(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 285,635 字 · 558 頁

青空文庫

しかし、二人は湯殿の中で、内密話をしているわけではなく、平常、座敷でする通りの熟しきった会話を取交しているに過ぎないから、ところが湯殿だとはいえ、邪推をする余地は少しもありません。

だが、平常の話を、平常の通りにするならば、なにも湯殿を選ぶ必要はないではないか。この屋敷には有り過ぎるほど室が幾間もあるので、七兵衛の座敷として、ほとんど開かずの間のようになっているところもあるのです。なんだって、今朝に限って、湯殿の中で誰憚らず話をしているのでしょう。

「ねえ、七兵衛さん、あの子を、もう一度つれて来て下さい、お前が連れて来る分には、あの子だっていやとは言うまい」

これはお絹の声。

「そうでございますねえ、来いといえば来るかも知れませんが、いつきますまいよ」

これは七兵衛の返事。

「あれが、本当のわたしの子であってくれればねえ」

「それは、あなたが、あれを本当の子供として可愛がって下さらないからですよ」

「それは、どういうわけだろう、あの子のためには、わたしは本当に親身になって、仕込むだけの事は仕込み、出世のできるだけは出世するように丹精をしたつもりですけれど」