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だいぼさつとうげ

大菩薩峠10

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠10(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 285,635 字 · 558 頁

青空文庫

「よしよし」

と与八は膝の藁屑を払って、台や、槌を片寄せながら、

「急ぎかね、お松さん、米のいるのは」

「なに、今晩と、明日の朝の分はあるんですとさ」

「ははあ……じゃあ、今晩、わしぁ、あの水車小屋へ泊って、明日の朝早く持って来りゃあ、それで間に合うね」

「え、それで間に合います」

「じゃあ、わしぁ、今晩は水車小屋へ泊って来るかも知れねえ、どっこいしょ」

与八は立ち上りました。

「じゃあ、頼みましたよ」

お松は砕けた絵馬の風呂敷を取りに来ながら、受取らずして行ってしまいました。

しかし、いったん立去ったお松が、まもなく取って返し、

「ねえ、与八さん」

「何だね」

「もう一つ言って置くことがありますよ、あのお隣りの作蔵さんがお湯に来ての話ですが、昨日あたりこの村へ、お役人に追われて、悪い泥棒が一人入り込んだんですって」

「へえ……」

「だから、用心をおしなさい。また怪しい者と見たらば、つかまえるか、お役所へ申し出るように、触れが廻ったんですって」

「あ、わしもお正午ごろ、その触れを聞きましたよ」

「そう、それじゃ、お前さんの方が、よく知っているでしょう、用心をするに如くはないから、気をつけて下さい」