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だいぼさつとうげ

大菩薩峠10

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠10(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 285,635 字 · 558 頁

青空文庫

もしまた七兵衛にして、徳川十四代の当城のあるじ家茂公の不幸なる生涯の物語をつぶさに聞いていたならば、この男は、ほんとうに涙を流して、自分のした仕事のいかに罰当りな、身の程知らぬ振舞であったかということに気がついて、西に向って、身を投げ出しておわびをし、血の涙をこぼして懺悔をしたか知れませぬ。

「なんだかツマらねえ、こういう時には、一ぺえやりてえのだが……」

しかしながら、その近所には、火の消えた火鉢と、不可思議の目的に供せられた火のつかない炭団があるばかりです。

そこで、所在なさに七兵衛は、くわえ煙管で、ツラツラ室の中を見廻し、壁にはってあった一枚の美人絵を見出すと、それを念入りにながめた後、

「この御殿女中じゃあ……これじゃあ、コツの三百女郎としか踏めねえ」

ニヤリと、皮肉に笑いました。

その絵は、供をつれた奥女中の一枚絵で、あんまり上等の浮世絵とはいえない。英山、英泉あたりの末流の筆に成って、彩色だけは人目をひくように出来ている。

けれども、このことから七兵衛は、江戸城の大奥の間取りを見て来てくれ、なんぞとたのまれたことを思い出したものですから、わざと、そのつまらない浮世絵が、当座の興味を惹いたと覚しく、コツの三百女郎にしか踏めないという奥女中の浮世絵も、腹も立たないで見ていました。