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だいぼさつとうげ

大菩薩峠11

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠11(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 368,567 字 · 720 頁

青空文庫

その花を、竜之助の眼の先につきつけました。

真正に、清浄な紫の色、この色が下界の花には無いと、竜之助も思いました。

「あれ、蝶が……」

とお雪は山吹のような金色の花模様の中に、ヒラヒラと舞う白い蝶を捉えようとして、浅瀬に裳をとられたように引返し、

「深山白蝶というのが、あれかも知れません」

信濃ギンバイの黄金の中に、深山白蝶の色。

蝶を追うて、二人は静かに上りにかかると、花をいくつも摘んで胸にかかえたお雪が、行手の山を指さして、

「白馬の頂が見えました」

「なるほど」

その山嶺を仰ぎ見ますと、真白な雪が、身ぶるいしているのを認めました。

「裏の国では、あれを大蓮華山と申します、こちらではシロウマと申します、それを、今では誰が言いならわしたか、ハクバヶ岳が通り名になってしまいました」

お花畑を出でると、雪の渓間がある、林泉がある、見慣れない獣が、きょとんとして、こちらを向いている。

「あれが羚羊です、あの獣は赤いものが好きで、赤いものさえ見せれば半日でも見ています」

お雪は帯の間から、これも目のさめるほどな紅絹の布片を取り出して、その獣に向って振ると、眼をクルクルして、いつまでもそれを見ている。