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だいぼさつとうげ

大菩薩峠11

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠11(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 368,567 字 · 720 頁

青空文庫

と同時に行燈が消えて、室は真の闇。

七

座敷が暗くなってから暫くして、短笛の音がこの一室から起りました。

「鈴慕」を吹いているのです。

この部屋の調子というものが、どうも「鈴慕」を吹くにふさわしく出来ているのか知らん。

それとも、習い性となって、手を動かせば尺八が手にさわり、尺八を取れば「鈴慕」が唇頭に上り来るのかも知れません。

とにかく、竜之助はここで「鈴慕」を吹きはじめました。

この男が、竹を鳴らすことに、どれだけの慰安と、一如とを、見出しているのだかそれはわかりません。

また好んで「鈴慕」を吹くといえども、「鈴慕」そのものの曲の示すところが何物であるか、それを味わいつつ吹くのでないことも勿論でしょう。いわゆる本曲について、見よう見まねのたしなみは持っているというこの男が、「虚霊」を吹かず「虚空」を吹かず、好んで「鈴慕」を吹きたがるところから見れば、それは何か手ざわりがよくて、虫が好くといったような、共鳴するところのものがあればこそだろうと思われます。

「虚霊」は天上の音、「虚空」は空中の音、「鈴慕」に至ってはじめて人間の音であります。