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だいぼさつとうげ

大菩薩峠11

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠11(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 368,567 字 · 720 頁

青空文庫

座敷を隔てたお銀様の間へ伺候してみたが、そこに尋ねる人がおりません。身の廻りの物はすべて、そのままにしてありますけれども、御当人がおらず、宿ですすめた茶碗の中の茶もさめきっているのを見ると、お角はなんとなく荒涼たる思いがしないではありません。

ああ、つい、うっかりお嬢様の御機嫌をそこねたか知らん、この心がかりが、お角ほどの女の胸をヒドク打ちました。

「お嬢様は……」

誰に聞いてみても知りません。お角はやや甲高い声になって、

「六さん、お前、なんだって、お嬢様におつき申していないんだエ」

甲州附の従者も叱れないから、自分の従者をドナリつけてみました。

宿の女中に聞いても知らない――

お角は、そこで胸を打ちました。

本来、ちょっとの間、当人の姿が見えないからとて、そんなに胸を騒がせたり、人を叱ったりするほどのことはないのですが、ナゼ、お角ほどの女が、面の色を変えるほど狼狽を見せたのか。

「ちぇッ、わたしといったら、自分ながら業が煮えてたまらない、一から十までわかりきっていながら、いい年をして、ついこんな抜かりをしでかすなんて、愛想がつきたものさ、ここを押せばここがハネるくらいのことを、御存じないお角さんじゃないのに、ちぇッ、いやになっちゃあなあ」