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だいぼさつとうげ

大菩薩峠11

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠11(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 368,567 字 · 720 頁

青空文庫

ともかくも、あえなく水倒しにされて、路上で陸沈の醜態をさらしている道庵それ自身は、思ったよりも天下泰平で、めでたく市が栄えたつもりでいるようです。

五十八

東妙和尚が、ある日のこと、与八に向って何を言うかと思えば、

「与八や――わしも永年、諸所方々を歩き廻って来たけれど、まずこの地方の梅干ほどうまい梅干はないと思うよ」

と言いました。

「へえ、そうでございますかね」

「まず日本一――とは言えるかどうか知らないが、この土地の梅干の味は無類だよ」

「そうでございますかね、この辺は桃の名所だということは、昔から誰も知っています」

「それは、桃の名所としても聞えたところだが、梅は格別だな」

「土地にばかりいちゃわかりませんね」

「そうだ、他と比較してみなくちゃ、すべて物のねうちというのはわからない」

「そんなどころじゃございません、この土地では、梅の木を邪魔にして、伐り払ってしまう家が多いようですね」

「それだ、わしも時々、出かけて見ると、あの枝ぶりの面白い老梅の樹を、むざむざと伐っているから、何にするのだと尋ねると、家が日蔭になって邪魔になるから伐って薪にすると言っていたが、さてさて、物の冥利を知らぬ話だと思って、つくづく意見をして来たことだがね、わしの意見もなかなかわかっちゃくれまい」