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だいぼさつとうげ

大菩薩峠11

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠11(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 368,567 字 · 720 頁

青空文庫

犬は見えたが猟師は見えない、犬の飼主というものも見えない。

黒い大きな犬が、七兵衛の方へと、おもむろに歩んで来る。群犬がそれに従うもののように、周囲から群れて来る。

黒い大きい犬が、七兵衛の真向いに来て、はたと歩みをとどめて、七兵衛の面を見る。

七兵衛もその犬を見る――両個が面を見合わせる。犬はそれより以上に進まない。七兵衛は、はて見たような犬だと思う。

「あ!」

七兵衛が思わず立ち上る。

犬が一声高く吠える。

だが、その吠える声になんらの険難はありませんでした。それは自他の警戒のために吠ゆるのではなく、むしろ驚異のために吠えたようなものです――

一声吠えただけで犬は、七兵衛の面をつくづくと見ている。

「あ!」

七兵衛の方で狼狽する。

彼は当然、この犬が自分に向って、のしかかって来るもののように警戒する。

だが、犬は動かない――

知る人は知ろう、この犬は間の山以来、七兵衛を見れば必ず吠えた犬です。吠えて飛びかかった犬です――飛びかかって、骨を食わなければやむまいとした犬です。その都度都度、七兵衛なればこそこの犬の鋭鋒を外して来たもので――外しは外したが、それはほとんど命がけでありました。