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だいぼさつとうげ

大菩薩峠16

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠16(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 268,946 字 · 520 頁

青空文庫

しろ!

勃然として怒りをなした米友が、

「先生! 起きろ!」

右の手をかざしたかと見ると、これはまた近ごろ手厳しい、道庵先生の横っ面をピシリと音を立てて一つひんなぐりました。なぐったのはむろん米友で、なぐられたのはその師であり、主であるところの道庵先生なのです。

「あ、痛え!」

それは多少手加減があったとはいえ、米友ほどの豪傑が、怒りに任せて打ったのですから、手練のほどだけでも相当以上にこたえたに相違ない。

さすがの道庵先生が、頬ぺたを抑えながら、寝床の上に一丈も高く飛び上ってしまいました。

「痛え!」

「先生、冗談じゃねえ、病人が出来たんだ、早く見てやっておくんなさい」

飛び上ってまだ痛みの去らない道庵を、米友が横から突き飛ばして、押しころがして、とうとうお雪ちゃんの寝ている寝床へまで押し込んでしまって、ほっと息をついたのです。

いかに何でも、先生の横っ面をぴしゃりと食わせるというようなことは、米友として前例のない手厳しさであるが、米友としては、安宅の弁慶の故智を学んだわけでもあるまいが、非常時をよそにする緩慢なる相手には、こうもせざるを得なかった動機の純真さには、同情を表してやらなければならないでしょう。