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だいぼさつとうげ

大菩薩峠16

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠16(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 268,946 字 · 520 頁

青空文庫

ました。

あいにくにもこの際、この男に向っては、セント・エルモス・ファイアーというようなものも飛びつかず、ファイアーの方でも、うっかり飛びつかない方が無事だと思ったものでしょう、絶えて異象を現わすことはなかったのですから、この黒漆崑崙が、何も目的あって、いずれに向って飛び出したのだか、一向わかりませんでした。

お雪ちゃんの部屋まで抓み飛ばされた道庵のことは暫く問わず、この闇がようやく消え去って、東方が白み渡った時分になっても、竜之助も帰らず、米友も立戻って来なかったことは事実であります。夜が全く明け放れましたけれど、ついに二人はこの館へは戻って来ませんでした。

しかし、朝の相当の時間になると、意外にもお雪ちゃんが起きて、窓の下の流しでしずかに水仕事をしているのを見ました。平常よりは蒼い面をして、全く病み上りの色でしたけれど、それでも立って流しもとで静かに水仕事をしている。それだけの元気があることによって、あの時の危急はけろりとしてしまっていることもわかり、それが米友の介抱の力もあり、道庵の医術のほどもありましたでしょうけれども、本来が何か突発的の急性のもので、事態の恐ろしかったほど、本質の危険なものでなかったことがわかるとすれば、とにかく一安心というものです。