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だいぼさつとうげ

大菩薩峠16

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠16(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 268,946 字 · 520 頁

青空文庫

本来ならば、たとえ頬かむりを取ってみたところで、この宵闇では、知った面であろうとも、なかろうとも、急にそれとは気のつくはずはないのですが、打てば響くようにお銀様が、はっきりと音を上げました。

「お嬢様、お久しぶりでございました」

「まあ、幸内――」

「お嬢様、ほんとにお久しぶりでございましたねえ」

「お前、どうして、こんなところに、何をしているの」

「はい、さきほど、兵作さんからお聞きの通りでございまして、誰もかまい手がないものでございますから、つい、おてつだいをして上げる気になりました」

「お前のその痩腕で、そんなことにまで頼まれなければいいに」

「でもお嬢様――わたしのようなものが頼まれて上げなければ、誰も頼まれてやる人はありませんもの」

「でも、もういいから、おやめ――お前の代りに、誰か人を雇って来て上げるから」

「有難うございます、では、そういうことに願いまして、わたしは、これからお嬢様のおともを致しましょう」

「そうしておくれ」

「それでは、あの井戸の傍へ行って手を洗って参りますから」

「わたしが洗って上げるからおいで」

「有難うございます」

そこで、お銀様は夢うつつのようになって、幸内を導いて行くと、墓地の中ほどに車井戸がある。