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だいぼさつとうげ
大菩薩峠16
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠16(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 268,946 字 · 520 頁
身上も、商売も、そっくり譲り受けた上に、あのお内儀さんを、忠実無類のわたしの女房として有難く納めている。これでも罰は当らない、ほんとうに御主人にもお気の毒なわけだが、泡んぶくにもお気の毒だ! こういう魔性が心の中に頭をもたげると、思わず面の表情に現われて、庭の泡んぶくを見ながら、思わずニッと笑いました。その笑い方が、さげすむような、あざ笑うような、たんのうするような、何とも言えない複雑な表情をして見せたものですから、傍にいたお内儀さんが、変な気になりました。昔は召使、今は夫として仕えているこの若い男が、泡んぶくを見て、ひとり変な笑い方をした、その意味がちっともわからない。それを気にしながらそれでも雨をやまして、無事に自分たちの家へ帰って来ました。
その晩の寝物語にです、お内儀さんは、この疑問を若い夫の上に打ちかけてみました、
「お前さん、さっき、お寺の縁で庭の泡んぶくを見て、変な笑い方をなさいました、あれは何の意味だか、わたしにはわかりません、思出し笑いというのは罪なものだそうですから、話しておしまいなさい、白状をしないと承知しませんよ」
というようなことを、甘ったるく問いかけたお内儀さんの心では、今では無二の可愛ゆい夫になっている男――思出し笑いは罪だというのは、深いさぐりの心で言ったのではない。