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だいぼさつとうげ
大菩薩峠16
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠16(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 268,946 字 · 520 頁
今は昔の初恋の人でないお銀様は、幸内の思い出なんぞにそう深い追懐を払ってやるがものはないといったふうに、かえってこの異国の風流貴公子の相手になって月を見てやる方が好もしい、という気分になったのでしょう。そうすると、先方も呼吸が合ったと見えて、
「あなたは、あの詩の一句を、最初は単なる叙景として覚えておいでのようでしたが、あとでお調べになって、叙景の句ではなくて、唐代美人の粉飾の形容だということをおさとりになったようですが、あれはやはり彼此同様の意味にとるのがよいのです。美人の眉目の形容と兼ねて、日まさに暮れんとする長安の黄昏を歌いました、語意相関にして着筆霊妙というところなのです」
「私には、あの詩が充分にわかってはおりません、どうか、御説明くださいませ」
「知っている限りはお聞かせ致しましょう。そうして、あなた様は、どちらへお越しなのでございますか」
「さあ、わたしとしたことが、館を出る時には確かに目あてがあって出て来たのですが、今となっては、どこへ行きましょうか、どこへ行かねばならないのか、それもわからなくなってしまいました」
「城南に行かんとすれば南北を忘る――というところですね」