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だいぼさつとうげ
大菩薩峠16
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠16(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 268,946 字 · 520 頁
はしないだろうかという懸念さえ起って、不安に堪えられませんでした。
「弁信さんも弁信さんです――なにもわたしたちさえ御参詣をしない先に、いくら身軽だからといって、たった一人でお山登りなんぞをしないでもよいではないか」
この信友もまた、自分に気をもませる存在の一つであるように思い案じてみました。
八
その心遣いが、その夜、枕についてからのお雪ちゃんを苦しいものにしました。
胆吹山から吹きおろす大風の中に、袖を翻して、ひたすらに山路を登る弁信の姿を、いと小さく、まざまざと目のあたりに見ました。
胆吹山容の雄偉にして黝黒なることは少しも変らず、大風はその山全体から吹き湧き、吹き起り、吹き上げ、吹き下ろすようにのみ思われて、つまり、山全体が大きな呼吸をしているようにしか、お雪ちゃんには受けとれなかったのは、さしも大風ではあるけれども、雨というものは一滴も降ってはいず、星の空はらんかんとして、山以外の天地は至って静かなものです。そこを、山だけが盛んにひとり吹き荒れ、吹きすさんでいるものですから、山自身が呼吸をしているものとしか思われません。その度毎に、弁信のやつれた法衣の袖が吹き裂けんばかりに吹き靡かされ、その小さな五体が吹き上げられ、吹き下ろされているのを見るばかりです。