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だいぼさつとうげ

大菩薩峠16

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠16(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 268,946 字 · 520 頁

青空文庫

「一つそれを摘んでごらんなさい」

「はい」

「それが胆吹の毒草というのですよ」

「毒草でございますか、薬草ではございませんか」

「薬草も毒草も同じことなんです、薬草も変じて毒草になるし、毒草もいつか薬草になることがあります、一つ摘んで香りをかいでごらんなさい」

「はい」

「遠慮には及びませんよ」

「でも……」

お雪ちゃんは、これを摘む気にはなれないのです。見てさえ胸の悪くなる、この魚血のようなドス黒い草の花――胆吹の山は薬草で満ちていると話には聞いているが、これはみんな毒草! 良薬は口に苦しということですから、見て身ぶるいするほどいやな草なればこそ、薬としての効能が強いものか。よし、それはそれとしても自分は手をのべて、この花を摘む気にはなれない。

たといそれは毒があろうとも、もっと美しい花を摘みたい――お雪ちゃんが、そう思ってためらっていると、意地悪そうにお銀様が笑い、

「そうでしょう、あなたは、そんなのを摘むのはおいやでしょう、いつぞや白馬ヶ岳のお花畑で、胸に余るほど摘み取って誰かに見せたような、ほんとに美しい色の花は、ここにはございません、ですから、あなたは、それを摘むのがおいやなんでしょう」