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だいぼさつとうげ

大菩薩峠19

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠19(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 319,771 字 · 617 頁

青空文庫

ました。

今まで、それを思い出さなかったのはどうしたものだ。

あの女が盗ったのだ、あの女が、泊り合わせた美僧と美女の情合いを嫉んで、美僧がかけて置いた釘頭の財を、そっと奪って隠したればこそ、二人は命を失った、財を奪うは即ち命を奪う所以であった。

その金は、天竜寺の和尚とやらの手許の金であったというではないか、生仏を地獄に落したほどの女が、人の恋愛の糧を盗み得ないと誰が言う。

憎い女、二人を殺したその財布の行きどころは確実にあれだ。

竜之助は、むらむらと、その心に駆られてみると、敵を外に求めてさまよい歩き出して来た自分を、少なからずうとましいものに思いました。

庫裡へ帰れば女がいる、憎い女がいる。老禅師を失脚させ、その愛弟子の命を奪った女が、猫を抱いて眠っている。それを追究することをしないで、何をこんなところへきてうろうろしていたのだ。

「帰る、月心院の庫裡へ帰る」

ほどなく、堂前を辞した竜之助の足どりは、宙に浮ぶが如く、月心院をめざして戻って来たが、庫裡へ戻って見ると、獅噛の火鉢に火はカンカンと熾っているが、人のいないことは出て行った時と同じで、行燈はあるが、明りのないことも前と同じ。