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だいぼさつとうげ

大菩薩峠19

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠19(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 319,771 字 · 617 頁

青空文庫

「よろしい、最後の一夜を明かしましょう、出立は一日延ばしてあげます」

「まあ嬉しい、嬉しい」

女は飛び立って悦びました。

五十六

ここは、あわらの温泉の一夜。

あわらの温泉は明治の十年に発見されたということだから、その時分はまだ地下に埋もれていた、その仮普請の一夜。

福松の言う相当の顔役が言っていた、旦那衆もてなしの数寄をこらした仮構に、庭も広いし、四辺の気遣いはなし。

そこで、兵馬はドテラに着替えて、福松も粋な浴衣の一夜、兵馬が改まって、

「では、道中お預かりの品、ここでしかとお渡し申す、お受取り下さい」

行李の中から取り出して、福松の眼の前に置いたのは、金包、すなわち問題の三百両の大金であります。

「それは、いただきません、これはわたしのものではございません」

そこで、問題の三百両の大金を前にして、二人の間に辞譲の押問答がはじまりました。

兵馬は、これはたしかに福松への授かり物で、本来は、代官の胡見沢が百姓をしぼって淫婦お蘭に入れ揚げた金だから、それが偶然の機会で福松の手に落ちたのは、すなわち授かり物であって、お金のためから言っても、淫婦の手に渡って湯水のように使われるよりは、福松の手に使われた方が有利にもなり、人助けにもなる、ほかへはドコへ持って行き場のない金、つまり天の与うる物を取らざれ