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だいぼさつとうげ

大菩薩峠19

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠19(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 319,771 字 · 617 頁

青空文庫

易者としてのお銀様は、算木筮竹をもって吉凶と未来とを占っているのではないのです。

この難解の文字を打砕かんとして苦闘をつづけているのですが、こればっかりは現実で歯が立たなかったように、夢になっても歯が立ちません。

そうして、現実の時に反抗したと同様の弾力を以て、夢で易経と取組んで、これに悩まされている自分を如何ともすることができません。

その時、庵外の夜に人のおとなうものがあって、ホトホトと柴折戸を打叩いている。

はて、深夜にここまで自分を訪ねて来る人はないはずだ、あるにしても、昨晩からここに宿を求め得たということは、自分も予期してはいなかったし、ここへ着いてはじめて不破の関守氏の肝煎りの結果なのだから、いずれのところからも、深夜に使者の立つ心当りはないのです。取合わないがよろしいと、お銀様も思案をきめまして、そのまま、また卦面に眼を落していると、

「もしもし、女易者様のお住居は、こちら様でございましたか、夜分、まことに恐れ入りますが、思案に余りましたことがございまして、お伺い致しました」

外でするのは、まだ若々しい男の声に相違ないが、その声音によって見ると、いかにもしおらしい、死出の旅からでもさまよい出して来たもののような、すさまじさが籠るので、お銀様の心も妙にめいりました。