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だいぼさつとうげ

大菩薩峠3

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠3(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 214,131 字 · 423 頁

青空文庫

お松がお茶を捧げて来たのはちょうどよい折でありました。

能登守は、お茶を捧げて来たお松の様子を見ると、どうもこの宿あたりにいる女中とは思われないから、

「そなたは、この家の娘御か」

と言って尋ねてみました。

「さきほどは伯母が上りましてお目通りを致しました」

「あ、左様であったか」

宿を周旋してやったためにお礼に来たさきほどの女、この娘はその連か、そうしてさきほどの女が気を利かして、この娘にお茶を持たしてよこしたのだろうと思い当りました。

「何ぞ、御用がござりましたなら、仰せつけ下さるようにとの伯母の申しつけでござりまする」

と言って、お松は能登守の前に指を突きました。

「それは御親切ありがたいが、別に用事といって……」

能登守はちょうど眼を落したのが、いま書いていた手紙であります。せっかくのことに、

「大儀ながらこの手紙を、明朝の飛脚で江戸へ届けてもらうように、この宿の主人へ手渡し下されたい」

と言って、その手紙を拾ってお松に渡しました。

「畏まりました」

「あの先刻の婦人は、そなたの伯母でありましたか」

「はい」

「よろしく申して下されよ」

お松はこうしてお茶を捧げて来て、手紙を持って能登守の許をさがる時に、まことに好い殿様だと思いました。