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だいぼさつとうげ
大菩薩峠7
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠7(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 242,044 字 · 477 頁
「すっかり晴れちまったね。いいお月見ですよ、旦那様」
駕籠屋がいい心持で天を仰いで、雨あがりの雲間の冴えた月をながめて、その気分をいささかながら駕中の人に伝えようとする好意で、
「ここのお月見は格別ですね、何しろ十二カ国が一目で見渡せるんですからね」
駕籠は、すすき尾花の大見晴らしを徐々と押分けて進むと、五十丁峠のやや下りになります。少しく下ってまた蜿蜒として、すすき尾花の中に見えつ隠れつ峰づたいに行く道が、すなわち小仏の五十丁峠。もし昼間にこれを通るならば、身の丈を蔽いかくすほどの、すすき尾花の路のつい足もとから、バタバタと雉子や山鳥が飛び出して、幾度か旅人を驚かすのですが、夜はすべての鳥が、その巣に帰っていると見えて、悠長な駕籠屋を驚かすほどの物音もなく、五十丁峠を七八丁ほど来て、また小高い峰の頂にかかった時、
「向うのあの松林の中で、変な火の色が見えたぜ」
「え、松林の中で?」
二人の駕籠屋はいい合わせたように、大だるみの方面へ走った峰つづきの松原の方を眺めました。
「なるほど」
「何だろう、あの火は」
「提灯でもなし」
「焚火でもなし」
駕籠の中で、それを聞いていた竜之助は、むらむらと昨夜の夢を思い起しました。