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だいぼさつとうげ

大菩薩峠7

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠7(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 242,044 字 · 477 頁

青空文庫

「さあ、どうぞ」

この旅人は、棒鼻の小田原提灯の中の火が所望と見えて、懐ろから煙草入を出すと、その面を提灯の傍へ持って行きました。駕籠屋は心得て提灯を外して、その旅人の鼻先に突きつけてやりながら、その面を見るとかなりの年配で、堅気の百姓のようでもあるし、何か一癖ありそうにも見えますが、物ごしは最初から丁寧で、好んでこの夜道を突切りたがる男とは見えません。

「いや、どうも有難うございました」

吸いつけた煙草をおしいただいて、お礼の真似事をしながら、ジロリと駕籠の方を見ましたが、あいにくに提灯をこっちへ持って来ていたものだから、横目でジロリと見たぐらいでは、思うように見当がつかないらしい。

「どう致しまして」

そこで旅人は、煙草をくゆらして、お別れをしようとしたが、また何か思いついたもののように、

「若い衆さん、お気をつけなさいましよ、やがて霧が捲いて来ますぜ」

「え、霧が……こんな雨上りの月夜にですか?」

「そうですよ、町の真中でさえ霧に捲かれると、方角を間違えますからな、ことに山路で霧に捲かれては、いくら慣れておいでなすっても、困ることがありますからね」

「そうですかねえ」