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かのうせいのぶんがく
夫婦善哉
織田 作之助
線上閱讀織田 作之助《夫婦善哉(かのうせいのぶんがく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 47,834 字 · 94 頁
そして、この追究の場としての小説形式は、つねに人間の可能性に限界を与えようとする定跡である以上、自由人としての人間の可能性を描くための近代小説の形式は、つねに伝統的形式へのアンチテエゼでなければならぬのに、近代以前の日本の伝統的小説が敗戦後もなお権威をもっている文壇の保守性はついに日本文学に近代性をもたらすという今日の文学的要求への、許すべからざる反動である。現在少数の作家が肉体を描くという試みによって、この保守性に反抗しているのは、だから、けっしてマイナス的試みではない。しかし、肉体を描くということは、あくまで終極の目的ではなくて単なるデッサンに過ぎず、人間の可能性はこのデッサンが成り立ってはじめてその上に彩色されて行くのである。しかし、この色は絵画的な定着を目的とせず、音楽的な拡大性に漂うて行くものでなければならず、不安と混乱と複雑の渦中にある人間を無理に単純化するための既成のモラルやヒューマニズムの額縁は、かえって人間冒涜であり、この日常性の額縁をたたきこわすための虚構性や偶然性のロマネスクを、低俗なりとする一刀三拝式私小説の芸術観は、もはや文壇の片隅へ、古き偶像と共に追放さるべきものではなかろうか。