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しっちょうき
失蝶記
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《失蝶記(しっちょうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 22,072 字 · 44 頁
だが私には聞えません、私は彼の肩を掴み、天を見あげながら叫びました。
「私の七生を賭けます、もし神仏がおわすなら、一と言だけでいい、杉永の云うことを聞かせて下さい」
だが皮肉なことに私の刀はあやまたず、充分に深く急所に達してい、杉永はそのまま絶息しました。私は彼を抱きしめて泣き、謝罪をしました。少年時代からのたった一人の友、もっとも信じあった友を、こんなふうに自分の手で殺した。耳さえ不自由でなかったら、――この気持はあなたにもわかっていただけると思う、私はすっかりわれを失い、絶息した彼を抱いたまま泣き続けました。
しかし長い時間ではなかった。ふと気がついて振返ると、西山のほうから提灯が五つ六つ、こちらへ向って走って来るのが見えたのです。梓久也なら一人の筈ですが、提灯の数から察するとかなりな人数らしい。ここで捕えられてはならない、そう思ったので、杉永の死躰に別れを云い、刀を拾い草履を捜して、泣きながらそこを逃げ去りました。
――どういう手違いだろう。
闇の中を走りながら考えました。考えるまでもなく、梓久也の裏切りだということは、初めからのことを思い合せればすぐにわかる筈です。