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きだんクラブ〔せんごばん〕

奇談クラブ〔戦後版〕

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《奇談クラブ〔戦後版〕(きだんクラブ〔せんごばん〕)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 11,830 字 · 24 頁

青空文庫

「うまい事をいうぜ、幽里子という署名まで書いてやるくせに、宛名を知らないという法があるものか」

「――――」

「僕の名は半沢伝次だ、――ラヴ・レターの宛名が僕でないことだけは確かだ」

「――――」

「成程、ただで言わせようと思ったのが、僕の間違いかもしれない、――お礼と言っちゃ気障だが、これ丈け上げようじゃないか。先生、その結構な職業意識とやらの買収費だ、――明日から代作の看板を外させる賠償といっても宜い」

半沢伝次はそういうと、ズボンの隠しから取出した紙幣の一と束、ざっと一万円位はあるだろうと思うのを、卓の上にピタリと置くのでした。

「気の毒だが、宛名は知らないよ。よしんば知っていたところで君に教えるわけにはいかない」

「まだ足りないのだな。ではこれも添えて」

伝次は左の小指から、何やら石の入った指環を抜いて、その札束の上に置くのです。

「帰ってくれ給え、――知らないといったら知らないよ」

東野南次は、この時ほど英雄的な心持になったことはありません。両手をむずと卓の上に置いて、胸を張ってこう大きく言い切ったのです。

「畜生ッ、覚えてやがれ、――いずれいわせずに置くものか。