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いかなるほしのもとに
如何なる星の下に
高見 順
線上閱讀高見 順《如何なる星の下に(いかなるほしのもとに)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 頁
そんなような場合の、あるとき、私はさりげない調子で、
「あんたは、どうして舞台をやめたの」
と尋ねた。火鉢の前には、美佐子と私だけしかいなかった。珍しく客のない静かな晩だった。いつもなら、火鉢のまわりにウロウロしていて、客の誰彼にかまわず纏りつく小さな子供も珍しくいなかった。
「――つまんないから」
「ふーん」
焼くのを美佐子にまかせて手持ち無沙汰の私は、真鍮のはがしで火鉢の縁を叩いていた。
「つまんないッて言うと……」
舞台にあきたのか。彼女はそれを遮って、女房のような調子で、
「ちょっと蜜を取ってちょうだい」
私は、ほいきたとあわてたような声を出して、手をのばして蜜の容器を取った。蜜を彼女は、焼けば焼くほどチリチリに縮みあがる肉の上に注ぎながら、
「いい年をして、十六七の娘と一緒に踊ってもいられませんわ」
そう言うと、まるで容器にあたるみたいに、ガチャリと乱暴にそれを置いた。十六七という言葉から、私は小柳雅子を思い出した。いつもはっきりと頭に刻まれている十七歳のその可憐な脆美な肉体と、眼前の(やや誇張的に言えば)脂ぎったぶよぶよの美佐子の身体とを比較した。