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ようじゅつ
妖術
泉 鏡花
線上閱讀泉 鏡花《妖術(ようじゅつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 10,293 字 · 21 頁
乗ったのは、どの口からも一帆一人。
入るともう、直ぐにぐいと出る。
ト前の硝子戸を外から開けて、その女が、何と!
姿見から影を抜出したような風情で、引返して、車内へ入って来たろうではないか。
そして、ぱっちりした、霑のある、涼しい目を、心持俯目ながら、大きくいて、こっちに立った一帆の顔を、向うから熟と見た。
見た、と思うと、今立った旧の席が、それなり空いていたらしい。そこへ入って、ごたごたした乗客の中へ島田が隠れた。
その女は、丈長掛けて、銀の平打の後ざし、それ者も生粋と見える服装には似ない、お邸好みの、鬢水もたらたらと漆のように艶やかな高島田で、強くそれが目に着いたので、くすんだお召縮緬も、なぜか紫の俤立つ。
空いた処が一ツあったが、女の坐ったのと同一側で、一帆はちと慌しいまで、急いで腰を落したが。
胸、肩を揃えて、ひしと詰込んだ一列の乗客に隠れて、内証で前へ乗出しても、もう女の爪先も見えなかったが、一目見られた瞳の力は、刻み込まれたか、と鮮麗に胸に描かれて、白木屋の店頭に、つつじが急流に燃ゆるような友染の長襦袢のかかったのも、その女が向うへ飛んで、逆にまた硝子越しに、扱帯を解いた乱姿で、こちらを差覗いているかと疑う。