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こをうばう

子を奪う

豊島 与志雄

線上閱讀豊島 与志雄《子を奪う(こをうばう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 39,292 字 · 80 頁

青空文庫

そしていつまでも床の中に愚図々々していた。漸く起き上って出て行くと、向うの室で兼子や依子の笑い声がしていた。彼は変な気がした。何だか家の中の様子が違ったように思われた。顔を洗う時、やたらに頭へ水を浴せた。

敏子は朝早く帰っていったそうだった。

「そうですか。」

彼は簡単に幾代へ答えた。そして何にも尋ねなかった。幾代もそれ以上何とも云わなかった。

依子は別に母親を探し求める風もなかった。幾代や兼子や女中達と面白そうに遊んでいた。玩具に倦きると庭に出た。庭に倦きると表へ出た。そしてまた玩具の所へ戻ってきた。も少し馴染むまでは遠くへ連れていってはいけない、と幾代は云った。その幾代を、依子は「お祖母ちゃま」と呼んでいた。兼子を「お母ちゃま」と呼んでいた。

そういう依子を、彼は不思議そうにわきから眺めた。これが自分の子かと思うと変な気がした。「あなたによく似ていますわ。」と兼子はくり返して云った。

遠くから見ると、大きい眼と口とだけが著しく目立った。近くから見ると、髪の毛に半ば隠れてる広い額と短い※(「臣+頁」、第4水準2-92-25)とが、何となく不平衡な感じを与えた。