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たぬきじる
完本 たぬき汁
佐藤 垢石
線上閱讀佐藤 垢石《完本 たぬき汁(たぬきじる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 133,158 字 · 273 頁
当時、酒の税制がどんな風になっていたか知らないが、私のとなりの家に、飲兵衛のお爺さんがいて、毎日炉傍で濁酒を、榾火で温めては飲んでいたのをいまも記憶している。納戸部屋の隅に伊丹樽を隠しておいて、そのなかへ醪を造り、その上へ茣蓙の蓋をして置く。それを、一日に何回となく杓子で酌み出しては鍋にいれてくるのだ。
ときどき、村の駐在巡査がやってきて、大きな炉のそばの框に腰をかけ、洋刀をつけたまま五郎八茶碗で、濁酒の接待にあずかり、黒い髭へ白の醪の糟をたらして、陶然としていたが、そのころは濁酒を隠し造りしても大してやかましくなかった時代とみえる。私もそのお爺さんに小僧のめのめと言われて、飲みなれたために、いまのような飲兵衛になってしまったものと思う。
ところが近年では次第々々に口が贅沢になって、濁酒では満足ができない。清酒も、品好みをするようになった。関西の方からくるいろいろの清酒を味わうが、もっとおいしいのはないものかと考えるようになったのである。けれど、現在世の中にあるおいしい酒というのはすべて味わい尽くしたから、この頃では昔上方にあったという『富士見酒』