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たぬきじる

完本 たぬき汁

佐藤 垢石

線上閱讀佐藤 垢石《完本 たぬき汁(たぬきじる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 133,158 字 · 273 頁

青空文庫

とか、または、

――大老は、関白尚忠と同腹にて、主上を仙洞御所に移し奉り、祐宮を擁立して新帝と仰ぎ奉り、関白をもって摂政となし、幕府の意の如く取り計らうべし――

とか、さらに、

――大老は江戸において、家老以下足軽に至るまで血判を押させ、これを引率して中仙道より西上し、彦根において在国の家老以下に、それぞれ血判を押させて徴発し総勢四千人ばかりにて上京、まず粟田宮、鷹司公父子を遠島に処し、近衛三条両公を知行所に押し込め、次に鳳輦を彦根城に遷し奉る計画であって、既に城を修繕し、領内湖浜の村々へは御用船数十艘を命じ、かつ領内米原において大屋根船一艘の製造に着手している――

などという蜚語が乱れ飛んだ。

そして、八月上旬から毎夕、酉刻頃彗星天の西北隅に現われて戌刻に隠れ、毎暁寅刻に至って再び天の東北隅に現われる。はじめのほどは、光芒長さ三、四尺ばかり、その形箒を逆さに立てたようであったが、次第に長くなって後では幾丈にも伸びて行った。

九月に入ってからも、それが消え去らなかった。祈祷師の六物空万はこの彗星を占って、『兵乱の兆である』と上書したのである。

されば、井伊大老の謀叛を信ずるものが段々と多くなり、畏くも主上をはじめ奉り、堂上の志徒は極端に激昂したのであった。