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たぬきじる

完本 たぬき汁

佐藤 垢石

線上閱讀佐藤 垢石《完本 たぬき汁(たぬきじる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 133,158 字 · 273 頁

青空文庫

茶を注いで飲んだ。大関は、懐紙を出して何か書きはじめた。

『雪景色に茶ばかりでもあるまい。一杯いくことにしよう』

有村は、こういって八蔵爺さんを呼んできた。

『おっさん、道の悪いのにご苦労だが酒を少々買ってきて貰いたい』

懐中から二朱金をとり出して、八蔵爺さんに渡して、

『一升あれば充分だ。それに、ちょっと摘むものを二、三品頼む。残った金はおっさんにみんなやる。』

『はい、どうも――』

爺さんは、低く頭を下げた。当時の物価では、これだけの買物についてくる二朱金の剰銭は莫大である。

五

爺さんは、酒と摘み物を買ってきた。すると有村は、

『おっさん度々ですまんが――実は拙者はけさ風呂屋へ褌を忘れてきた。お恥ずかしい話だが、ちょっと二筋ばかり買ってきてくれまいか』

こう言って、また一朱金をひと粒出した。有村は、爺さんが酒買いに出て行ってから、自分の褌の汚いのに気がついたからである。我が死にざまを眼に描いた。

五人は、他の同志のくるのを千秋の思いで待った。やがて第一番に海後磋磯之介と山口辰之介が絵馬堂を捜してきた。次に、関鉄之介、野村彝之介、木村権之衛門、森五六郎、佐野竹之介、黒沢忠三郎、斎藤監物、蓮田市五郎、広岡子之次郎、鯉淵要人、稲田重蔵、岡部三十郎、森山繁之助などが、ぽつりぽつりと集まってきた。