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ほうえいふんか
宝永噴火
岡本 かの子
線上閱讀岡本 かの子《宝永噴火(ほうえいふんか)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 31,505 字 · 62 頁
江戸時代の随筆のうちにある。あまりに昔の型通りな恋愛譚の発端なので、拵え話だとする人もあるだろうと思うが、それでもよいと思う。これ以外にはこの聖者に関する恋愛譚は全く見当らないし、私がこの伝記を書く目的は史実の為でなく、この聖者をまさぐって行ってあの神秘とあの神秘に触れた識管が、およそどのようなものであるか、いわば聖者を仮りの道具に使って私は私の中に在る慾望とその満足の仕方とを考えてみたいのが唯一の願いなのだから拵え話なら拵え話を利用して、白隠を掴んで見たい。それはちょうど、数学に於てある計算はわざと虚構な数を設け、置かれた数に加減乗除してみて、所用を達した上は、再びその数を退けるという方法に似たやり方であろう。その方法として私はこの拵え話とも思われるものを使ってみてもいい。兎に角、聖者の心理には一度ぐらい普通の恋愛を関係さしてみて、そこにどんな現象を呈し出すかを試すことは私に於て是非必要なことと思われる。
慧鶴が橘屋に出入りしているうちに、娘はこの若い修道僧を恋するようになった。この娘は恋の懊悩の為、この年の翌々年、宝永二年に死んでしまうことになっているが、人間は単に恋のような精神的の苦悩の為に滅多に死ぬものではないと私は思う。