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じっけんしつのきおく
実験室の記憶
中谷 宇吉郎
線上閱讀中谷 宇吉郎《実験室の記憶(じっけんしつのきおく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 6,440 字 · 13 頁
ところが不思議なことには、一番細い繊維を使って、感度を極端にあげた象限電位計が、ここでは、半年もすると誰にでも使えるようになるのであった。もちろん、英国の気候が日本と反対に夏比較的乾いていることも、その理由の一つであろうが、そればかりとはいえないような気がする。要するに、これも実験室に残る記憶なのであろう。
そういえば、ここで問題としていた高真空と象限電位計による極微電流の測定との間には、その技術のこつに、互いに一脈通ずるものがあった。両方ともに、恐るべきものは漏洩である。複雑な形の容器で、導線がそれから沢山外へ引き出されている場合なので、空気の漏洩によほど注意をしないと、とても10-6ミリなどという真空にはならなかった。電位計の方も同じことで、X線の電源として五〇〇ボルトないし一〇〇〇ボルトの電圧を同時に使っているので、この方も漏電を完全にとめない以上、10-12アンペアの精度は得られない。漏洩が本質的に測定や実験の成否を決定する場合には、ほとんどすべての点が完全でもただ一カ所に漏洩があれば万事が駄目になる。この場合には、九割まで注意が行き届いても、九割九分まで行っても、結果はひとしく零に近いものである。