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いえ

家

島崎 藤村

線上閱讀島崎 藤村《家(いえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 141,411 字 · 285 頁

青空文庫

到頭、三吉はこんな狂人じみた声を出すように成った。

二人の前垂を持った商人らしい男が、威勢よく格子戸を開けて入って来た。一人は正太だ。今一人は正太が連れて来た榊という客だ。

「今日は」

と正太はお俊やお延に挨拶して置いて、連と一緒に叔父の部屋へ通った。

お俊は茶戸棚の前に居た。客の方へ煙草盆を運んで行った従姉妹は、やがて彼女の側へ来た。

「延ちゃん、貴方持って行って下さいな――私が入れますからネ」

と言って、お俊は茶を入れた。

客の榊というは、三島の方にある大きな醤油屋の若主人であった。不図したことから三吉は懇意に成って、この人の家へ行って泊ったことも有った。十年も前の話。榊なら、それから忘れずにいる旧い相識の間柄である。唯、正太と一緒に来たのが、不思議に三吉には思えた。そればかりではない、醤油蔵の白壁が幾つも並んで日に光る程の大きな家の若主人が、東京に出て仮に水菓子屋を始めているとは。加に、若い細君が水菓子を売ると聞いた時は、榊が戯れて言うとしか三吉には思われなかった。

「現に、私が買いに行きました」と正太が言出した。「私もネ、しばらく気分が悪くて、伏枕っていましたから、何か水気のある物を食べたいと思って買わせに遣るうちに……どうも話の様子では、普通の水菓子を売る家の内儀さんでは無い。