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よせとしばいと
寄席と芝居と
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《寄席と芝居と(よせとしばいと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 26,084 字 · 52 頁
その翌年、三十三年八月に円朝は世を去ったのである。その年の十一月、春木座で円朝物の「敵討札所の霊験」を上演した。主なる役割は水司又市(市蔵)白鳥山平(稲丸)おやま(莚女)おつぎ(九女八)等で、これも差したる問題にならなかった。このほかにも、円朝物で脚光を浴びたものには「舞扇恨の刃」「業平文治漂流奇談」「緑林門松竹」等々、更に数種にのぼるのであるが、小さい芝居は一々ここに挙げない。
かくの如くに、円朝物の劇化がしばしば行なわれたにも拘らず、その歿後には一向に舞台にのぼらなくなった。それを話す人がこの世にいなくなっては、興行価値が乏しい為であろうか。その人去った後は、その続き話も自然に忘れられた為であろうか。実際、円朝の話も大かた忘れられて、その代表的作物として「塩原多助」「牡丹燈籠」「真景累ヶ淵」等が舞台の上にも繰り返され、一般の人にも記憶されているに過ぎない。
五 団十郎の円朝物
以上列挙したところに拠ると、大劇場で円朝物を上演したのは、ほとんど五代目菊五郎の一手専売というべきである。それは人情話の性質上、すべてが世話狂言式の物であるから、団十郎や左団次の出し物には適しない。