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さむはし

寒橋

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《寒橋(さむはし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 18,416 字 · 36 頁

青空文庫

「――ふしぎだわ、女の躯って、……どうしてかしら、ほんとにいやだわ」

いやだと云いながら、しかも一方では、いくら眺めても眺め飽きないのである。

「――なにをしているんだ、またそんな恰好で、肌をいれたらどうだ、風邪をひくじゃないか」

父親に叱られて、はっとして、そのくせ自分でもわざとらしいほどおちついたすましようで、ゆっくりと着物の袖へ手を入れる。毎々のことだがこれもじつは恥ずかしい。母親がはやく亡くなったせいだろう、まえには父親のほうで気にして、髪結いにゆけとか、白粉の刷きかたがぞんざいだとかよく云われたものだ。

――母親がいないと娘はじじむさくなるって、世間ですぐに云われるんだから、……いっそ白粉をつけないならつけない、つけるなら娘らしくちゃんとつけるがいい。

――今日はこれでいいのよ、今日は白粉ののりが悪いんだもの……それに天気がこんなでくさくさしているのよ、こんな、……白粉なんかどっちでもいいわ。

――それじゃあ済まないんだ、女の髪化粧というものは世の中の飾りといってもいいくらいで、うす汚ない饐えたような裏店でも、きれいに髪化粧をした女がとおれば眼のたのしみになる、……いっときその饐えたような裏店が華やいでみえる、……つまり春になって花が咲くように、世の中の飾りの一つになるんだ、……化粧をするんなら