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どんぐり
寺田寅彦随筆集 第一巻
寺田 寅彦
線上閱讀寺田 寅彦《寺田寅彦随筆集 第一巻(どんぐり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 頁
ちょうど夕飯をすまして膳の前で楊枝と団扇とを使っていた鍛冶屋の主人は、袖無しの襦袢のままで出て来た。そして鴨居から二つ鋏を取りおろして積もった塵を口で吹き落としながら両ひじを動かしてぐあいをためして見せた。
柄の短いわりに刃の長く幅広なのが芝刈り専用ので、もう一つのはおもに木の枝などを切るのだが芝も刈れない事はない。芝生の面積が広ければ前者でなくては追い付かないが、少しばかりならあとのでもいい。素人の家庭用ならかえってこれがいいかもしれないなどと説明しながら、そこらに散らばっている新聞紙を切って見せたりした。「こういう物はやっぱり呼吸ですから……。」そんな事を言った、また幾枚も切り散らして、その切りくずで刃の塵をふいたりした。
芝を刈る鋏と言えば一通りしかないものと簡単に思い込んでいた私は少し当惑した。このような原始的な器械にそんな分化があろうとは予期していなかった。どちらにしようかと思ってかわるがわる二つの鋏を取り上げてぐあいを見ながら考えていた。なるほど芝を刈るにはどうしても専用のものがぐあいがいいという事は自分にも明白に了解された。しかしそれで枯れ枝などを切ると刃が欠けるという主人の言葉はほんとうらしかった。