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どんぐり

寺田寅彦随筆集 第一巻

寺田 寅彦

線上閱讀寺田 寅彦《寺田寅彦随筆集 第一巻(どんぐり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 頁

青空文庫

そうでなくては成り立ちそうもない学説やイズムがわれわれの目に触れるほどだから。

三越の四階に食堂がある、たしか以前は小さな室であったのが、その後拡張されて今のような大きな部屋になったと思う。ちょっと清潔に簡便に食欲を満足させ、そうして時間をつぶすに適当なようにできている。普通の日本人の食事時間でない時でも不断ににぎわっている。草花鉢を飾ったり、夏は花を封じ込めた氷塊がいくつもすえられていて、天井には大きな扇風器が回っている。田舎から始めて来た人などに、ここで汁粉かアイス一杯でもふるまうと意外な満足を表せられる事がある。ここの食卓へ座をとって、周囲の人たち、特に婦人の物を食っているさまを見ると一種の愉快な心持ちになって来る。ある人のいうようにあさましいなどという感じは自分には起こらない。呉服売場や陳列棚の前で見るような恐ろしい険しい顔はあまりなくって、非常に人間らしい親しみのある顔が大部分を占めている。この食堂を発案したのはだれだか知らないが、その人はいろいろな意味でえらい人のように思われる。

食堂のほかには食品を販売する部が階下にある。人によると近所の店屋で得られると同じ罐詰などを、わざわざここまで買いに来るということである。