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どんぐり
寺田寅彦随筆集 第一巻
寺田 寅彦
線上閱讀寺田 寅彦《寺田寅彦随筆集 第一巻(どんぐり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 頁
われわれがもっている生理的の「時」の尺度は、その実は物の変化の「速度」の尺度である。万象が停止すれば時の経過は無意味である。「時」が問題になるところにはそこに変化が問題になる四元世界の一つの軸としてのみ時間は存在する。
ところがこの生理的の速度計はきわめて感じの悪いものである。ある度以下の速度で行なわれる変化は変化として認める事ができない。これはまた吾人が個々の印象を把持する記憶の能力の薄弱なためとも言われよう。
忘却という事がなかったら記憶という事は成り立たないと心理学者は言う。忘却というものがなかったら生きていられないと詩人は叫ぶ。
もし記憶の衰退率がどうにかなって、時の尺度が狂ったために植物の生長や運動が私の見た活動写真のように見えだしたらどうであろう。春先の植物界はどんなに恐ろしく物狂わしいものであろう。考えただけでも気が違いそうである。「青い鳥」の森の場面ぐらいの事ではあるまい。
五
近年急に年を取ったせいか毎年春の来るのが待ち遠しくなった。何よりも気温の高くなるのが、ありがたいのである。しかしいったいには年じゅうの時候のうちでは春はあまり自分の性に合わないほうである。