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どんぐり

寺田寅彦随筆集 第一巻

寺田 寅彦

線上閱讀寺田 寅彦《寺田寅彦随筆集 第一巻(どんぐり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 頁

青空文庫

絵の具箱へスケッチ板を一枚入れて、それと座ぶとん代わりの古い布切れとを風呂敷で包み隠したのをかかえて市内電車で巣鴨まで行った。省線で田端まで行く間にも、田端で大宮行きの汽車を待っている間にも、目に触れるすべてのものがきょうに限って異常な美しい色彩で輝いているのに驚かされた。停車場のくすぶった車庫や、ペンキのはげかかったタンクや転轍台のようなものまでも、小春の日光と空気の魔術にかかって名状のできない美しい色の配合を見せていた。それに比べて見ると、そこらに立っている婦人の衣服の人工的色彩は、なんとなくこせこせした不調和な継ぎ合わせもののように見えた。こんなものでも半年も戸外につるして雨ざらしにして自然の手にかけたら、少しは落ちついたいい色調になるかもしれないと思ったりした。実際洗いざらしの鉄道工夫の青服などは、適当な背景の前には絵になるものの一つである。ヴェニスの美しさも半分は自然のためによごれさらされているおかげである。

乗り込んだ汽車はどこかの女学校の遠足で満員であった。汽車が動きだすと一団の生徒らは唱歌を歌いだした。それはなんの歌だかわからないが、二部の合唱で、静かな穏やかな清らかな感じのするものであった。