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からすうりのはなとが
寺田寅彦随筆集 第三巻
寺田 寅彦
線上閱讀寺田 寅彦《寺田寅彦随筆集 第三巻(からすうりのはなとが)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 213,804 字 · 425 頁
ガスマスクをつけた人間の顔は穀象か何かに似ている。今後の戦争科学者はありとあらゆる動物の習性を研究するのが急務ではないかという気がして来る。
光のかげんでからすうりの花が一度に開くように、赤外光線でも送ると一度に爆薬が破裂するような仕掛けも考えられる。鳳仙花の実が一定時間の後にひとりではじける。あれと似たような武器も考えられるのである。しかしまねしたくてもこれら植物の機巧はなかなかむつかしくてよくわからない。人間の知恵はこんな些細な植物にも及ばないのである。植物が見ても人間ほど愚鈍なものはないと思われるであろう。
秋になると上野に絵の展覧会が始まる。日本画の部にはいつでも、きまって、いろいろの植物を主題にした大作が多数に出陳される。ところが描かれている植物の種類がたいていきまり切っていて、だれも描かない植物は決してだれも描かない。たとえばからすうりの花の絵などついぞ見た覚えがない。このあいだの晩、床にはいってから、試みに宅の敷地内にある、花の咲く植物の数を数えてみた。二三十もあるかと思って数えてみたら、実際は九十余種あった。しかし帝展の絵に現われる花の種類は、まだ数えてみないが、おそらくずっと少なそうである。