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からすうりのはなとが

寺田寅彦随筆集 第三巻

寺田 寅彦

線上閱讀寺田 寅彦《寺田寅彦随筆集 第三巻(からすうりのはなとが)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 213,804 字 · 425 頁

青空文庫

ほかはないことになる。しかしそこをくぐることによって、もしそうでなかったら決して生涯見ることのなかったはずの珍しく新しい国を遍歴する第一歩を踏み出すことができるのである。もっともこのようなことは何も連句に限らず他の百般の事がらに通有ないわゆる「転機」の妙用に過ぎないので、われわれ人間の生涯の行路についても似よったことが言われるであろうが、そういう範疇の適切なる一例として見らるるという点に興味があるであろう。またそう見ることによって定座の意義が明瞭となり、また制作に当たっての一つの指針を得ることができるであろうかと思われる。

そういう役目を月と花との二つに負わせた事にも興味がある。これは一つには古来の伝統による雪月花の組み合わせにもよる事であろうが、しかし月花の定座に雪を加えてはたしかに多すぎてかえって統率が乱れる。しかしいずれか一つではまたあまりに単調になる。だいたいにおいて春の花のほがらかさと、秋の月の清らかさとを正と負、陽と陰の両極として対立させたものであるに相違ない。音楽で言わば長音階と短音階との対立を連想させるものもある。もちろん定座には必ず同季の句が別に二句以上結合して三協和音のごとき一群をなすのであって、結局は春秋季題の插入位置を規定する、その代表者として花と月とが選ばれているとも言われる。