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からすうりのはなとが

寺田寅彦随筆集 第三巻

寺田 寅彦

線上閱讀寺田 寅彦《寺田寅彦随筆集 第三巻(からすうりのはなとが)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 213,804 字 · 425 頁

青空文庫

いかなる人にいかなる恋をしたらいいかと聞かれるのとたいした相違はないような気がする。時にはこんな返答をすることもある。「自分でいちばん読みたいと思う本をその興味のつづく限り読む。そしていやになったら途中でもかまわず投げ出して、また次に読みたくなったものを読んだらいいでしょう」大根が食いたくなる時はきっと自分のからだが大根の中のあるヴィタミン・エッキスを要求しているのであろう。その時われわれは何も大根を食うことの必然性を証明した後でなければそれを食っていけないわけのものではない。また友人のIが大根を食ってよろずの病を癒やし百年の寿を保つとしても、自分がそのまねをして成効するという保証はついていない。ある本を読んで興味を刺激されるのは何かしらそうなるべき必然な理由が自分の意識の水平面以下に潜在している証拠だと思われる。それをわれわれの意識の表層だけに組み立てた浅はかな理論や、人からの入れ知恵にこだわって無理に押えつけねじ向ける必要はないように思われる。人々の頭脳の現在はその人々の過去の履歴の函数である。それである人がある時にAという本に興味を感じて次にBに引きつけられるということが一見いかに不合理で偶然的に見えても、それにはやはりそうなるべきはずの理由が内在しているであろう。