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からすうりのはなとが
寺田寅彦随筆集 第三巻
寺田 寅彦
線上閱讀寺田 寅彦《寺田寅彦随筆集 第三巻(からすうりのはなとが)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 213,804 字 · 425 頁
(昭和六年十月、中央公論)
七
ルネ・クレール作「自由をわれらに」は近ごろ見た発声映画の中でもっとも愉快なものである。刑務所や工場を題材にしているにかかわらず、全体に明るい朗らかな諧調が一貫している。このおもしろさはもちろん物語の筋から来るのでもなく、哲学やイデオロギーからくるのでもなんでもなくて、全編の律動的な構成からくる広義の音楽的効果によるものと思われる。
この映画の視覚的要素で著しく目立ったライトモチーフと思われるものは、並行直線と円による幾何学的形像の構成、それから直線運動と円運動との律動的な交錯である。
刑務所の仕事場と食堂の並行直線。これに対応して蓄音機工場における全く同様な机と人間の並行線列。学校教場の生徒の列もいくらかこれに応ずるエピソードである。刑務所と工場との建築に現われるあらゆる美しい並行直線の交響楽。脱獄のシーンに現われる二重の高塀の描く単純で力強い並行線のパースペクチヴ。牢屋や留置場の窓の鉄格子、工場の窓の十字格子。終わりに近く映出される丸箱に入った蓄音機の幾何学的整列。こういったようなものが緩急自在な律動で不断に繰り返される。