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からすうりのはなとが

寺田寅彦随筆集 第三巻

寺田 寅彦

線上閱讀寺田 寅彦《寺田寅彦随筆集 第三巻(からすうりのはなとが)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 213,804 字 · 425 頁

青空文庫

流行の姿を備えるためには少なくも時と空間いずれか、あるいは両方の決定が必要である。季題の設定はこの必要に応ずるものである。季題のない発句はまれにはあるとしてもそれは除外例である。二条良基は連歌の句々の推移のありさまを浮世の盛衰にたとえ、また四季の運行に比べている。これは気候変化の諸相のきわめて複雑多様な日本の国土にあって、この変化に対する敏感性を養われて来た日本人にのみ言われる言葉である。それで連歌以来季題が制定されてそれが俳諧に墨守されて来た事は決して偶然ではないのである。たとえばフランス人ジュリアン・ヴォカンスが大戦の塹壕生活を歌った、七、七、七シラブルの「ハイカイ」には全く季題がないので、どうひいき目に見てもわれわれには俳諧とは思われないのである。(改造社俳句講座第七巻、後藤氏「フランスの俳諧詩」参照)

季題の中でも天文や時候に関するものはとにかく、地理や人事、動物、植物に関するものは、時を決定すると同時にまた空間を暗示的に決定する役目をつとめる。少なくもそれを決定すべき潜在能をもっている。それで俳句の作者はこれら季題の一つを提供するだけで、共同作者たる読者の連想の網目の一つの結び目を捕えることになる。