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からすうりのはなとが

寺田寅彦随筆集 第三巻

寺田 寅彦

線上閱讀寺田 寅彦《寺田寅彦随筆集 第三巻(からすうりのはなとが)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 213,804 字 · 425 頁

青空文庫

学生の中に質問好きの男がいて根掘り葉掘りうるさく聞いていると、「そんなことは、君、書いた当人に聞いたってわかりゃしないよ」と言って撃退するのであった。当時の先生は同窓の一部の人々にはたいそうこわい先生だったそうであるが、自分には、ちっともこわくない最も親しいなつかしい先生であったのである。

科外講義としておもに文科の学生のために、朝七時から八時までオセロを講じていた。寒い時分であったと思うが、二階の窓から見ていると黒のオーバーにくるまった先生が正門から泳ぐような格好で急いではいって来るのを「やあ、来た来た」と言ってはやし立てるものもあった。黒のオーバーのボタンをきちんとはめてなかなかハイカラでスマートな風采であった。しかし自宅にいて黒い羽織を着て寒そうに正座している先生はなんとなく水戸浪士とでもいったようなクラシカルな感じのするところもあった。

暑休に先生から郷里へ帰省中の自分によこされたはがきに、足を投げ出して仰向けに昼寝している人の姿を簡単な墨絵にかいて、それに俳句が一句書いてあった。なんとかで「たぬきの昼寝かな」というのであった。たぬきのような顔にぴんと先生のようなひげをはやしてあった。