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からすうりのはなとが

寺田寅彦随筆集 第三巻

寺田 寅彦

線上閱讀寺田 寅彦《寺田寅彦随筆集 第三巻(からすうりのはなとが)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 213,804 字 · 425 頁

青空文庫

先生の死後に出て来たノートの中に「Tのすしの食い方」と覚え書きのしてあったのは、この時のことらしい。

千駄木へ居を定められてからは、また昔のように三日にあげず遊びに行った。そのころはやはりまだ英文学の先生で俳人であっただけの先生の玄関はそれほどにぎやかでなかったが、それでもずいぶん迷惑なことであったに相違ない。きょうは忙しいから帰れと言われても、なんとか、かとか勝手な事を言っては横着にも居すわって、先生の仕事をしているそばでスチュディオの絵を見たりしていた。当時先生はターナーの絵が好きで、よくこの画家についていろいろの話をされた。いつだったか、先生がどこかから少しばかりの原稿料をもらった時に、さっそくそれで水彩絵の具一組とスケッチ帳と象牙のブックナイフを買って来たのを見せられてたいそううれしそうに見えた。その絵の具で絵はがきをかいて親しい人たちに送ったりしていた。「猫」以後には橋口五葉氏や大塚楠緒子女史などとも絵はがきの交換があったようである。象牙のブックナイフはその後先端が少し欠けたのを、自分が小刀で削って形を直してあげたこともあった。時代をつけると言ってしょっちゅう頬や鼻へこすりつけるので脂が滲透して鼈甲色になっていた。