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からすうりのはなとが
寺田寅彦随筆集 第三巻
寺田 寅彦
線上閱讀寺田 寅彦《寺田寅彦随筆集 第三巻(からすうりのはなとが)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 213,804 字 · 425 頁
英語やドイツ語やフランス語の風景という言葉にしても、それがわれわれのいう風景とはたしてどこまで内容的に一致するかも研究に値する。それはいずれにしても、日本のように多種多様な地質気候がわずかな距離の範囲内で錯雑した国であってこそ、はじめて風景という言葉がほんとうに生きて働いて来るような気がするのである。こういう風景国日本に生まれた旅客にカメラが欠くべからざる侶伴であるのも不思議はないであろう。
親譲りの目は物覚えが悪いので有名である。朝晩に見ている懐中時計の六時がどんな字で書いてあるかと人に聞かれるとまごつくくらいであるが、写真の目くらい記憶力のすぐれた目もまた珍しい。一秒の五十分の一くらいな短時間にでもあらゆるものをすっかり認めて一度に覚え込んでしまうのである。
その上にわれわれの二つの目の網膜には映じていながら心の目には少しも見えなかったものをちゃんとこくめいに見て取って細かに覚えているのである。たとえばショーウィンドウの内の花を写すつもりでとった写真を見ると、とるつもりの夢にもなかったあらゆる街頭の人影の反映が写っているのである。盛り場である人がなんの気なしにとった写真に掏摸が椋鳥のふところへ手を入れたのがちゃんと写っていたという話を聞いたこともある。