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つきとあざらし

小川未明童話集

小川 未明

線上閱讀小川 未明《小川未明童話集(つきとあざらし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。

N3 · 進階 · 新字新假名 · 9,033 字 · 20 頁

青空文庫

」と、おばあさんは、口のうちでいいましたが、目がかすんで、どこから血が出るのかよくわかりませんでした。

「さっきのめがねはどこへいった。」と、おばあさんは、たなの上をさがしました。めがねは、目ざまし時計のそばにあったので、さっそく、それをかけて、よく少女のきず口を、見てやろうと思いました。

おばあさんは、めがねをかけて、この美しい、たびたび自分の家の前を通ったという娘の顔を、よく見ようとしました。すると、おばあさんはたまげてしまいました。それは、娘ではなく、きれいな一つのこちょうでありました。おばあさんは、こんなおだやかな月夜の晩には、よくこちょうが人間にばけて、夜おそくまで起きている家を、たずねることがあるものだという話を思いだしました。そのこちょうは足をいためていたのです。

「いい子だから、こちらへおいで。」と、おばあさんはやさしくいいました。そして、おばあさんはさきに立って、戸口から出てうらの花園の方へとまわりました。少女はだまって、おばあさんのあとについて行きました。

花園には、いろいろの花が、いまをさかりと咲いていました。ひるまは、そこに、ちょうや、みつばちが集まっていて、にぎやかでありましたけれど、いまは、葉かげでたのしいゆめをみながらやすんでいるとみえて、まったくしずかでした。