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しょうせつ えんちょう

小説 圓朝

正岡 容

線上閱讀正岡 容《小説 圓朝(しょうせつ えんちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 163,270 字 · 325 頁

青空文庫

どうしてこう逆らってちょぼくれ仕立になってくるんだろう。このお経の文句はますます、小木魚が叩きたいよ。

「……菩提薩、般若波羅蜜多に依るが故に、心礙無し、※(「罘」の「不」に代えて「圭」、第4水準2-84-77)礙無きが故に、恐怖有ること無し」

うわーッ、な、何てだだら長いないものづくしだ。音を上げて次郎吉は経文を伏せてしまった。妄念を払うがごとく、欄間を見た。

張りめぐらされている赤地錦へ、蜿々として金龍が一匹蟠り、それが朝風に戦いていた。

「……」

その唐風の暖簾のようなものの一番端に、吹抜亭さんへ、ひいきより――という文字を、アリアリと幻に見た。

「いけない」

ハッと次郎吉は眼を閉じた。

やがて、ひらいた。

目を逸らすように天井を見た。

貧乏寺でもさすがにこればかりは金色燦爛とした天蓋が、大藤の花の垂るるがごとく咲き垂れていた。

その天蓋に、今度は高座の上から吊されているあの八間の灯を感じた。

いけない。

またまた次郎吉はしばらく目を閉じた。

そして、ひらいた。

慈愛を含めている正面の阿弥陀さまのお姿が、その左右のあかあかと燃えている大蝋燭が、次郎吉のようなお寺嫌いのものにも目に入ってきた。